ポリエチレングリコール槽に入る社宮司(しゃぐうじ)遺跡の木器たち (木器処理室より2)
遺跡から出土した木器はとても弱く、そのままでは遠い将来まで残しておくことができません。そこで、ポリエチレングリコール(PEG)という合成樹脂を、木器に染み込ませる方法で保存処理を行っています。
まず、大型ステンレス槽にポリエチレングリコール溶液を満たし、そこに添え木や綿などで保護した木器を浸していきます。ポリエチレングリコールを無理なく、まんべんなく木器に浸透させるため、最初は、20%のポリエチレングリコール溶液からはじめます。その後、3〜4ヶ月ごとに順次濃度を上げ、約2年ほどかけて、100%のポリエチレングリコールが木の細胞のすき間全体に行き渡るようにします。この間、ポリエチレングリコールが一部分に偏って固まらないようにするため、常時、ポリエチレングリコール槽を加温・循環させておきます。
現在、3つの槽を稼働していますが、これに加え、2013年10月18日(金曜日)〜2013年10月27日(日曜日)の間に、4槽目へ木器を浸す作業を行いました。
今回は、千曲市の社宮司遺跡出土品を中心に、1,900点余りが対象です。社宮司と言えば、県宝に指定された六角宝幢(ろっかくほうどう)が出土した遺跡です。今回、宝幢と同じ溝で眠っていた平安時代の木製品が多数ポリエチレングリコール槽に入りました。保存処理後には、晴れて展示室デビューができます。さらに、条件さえ整えば、安心して手に取って研究を進めることも可能になります。ご期待ください。
実は、木器をポリエチレングリコール槽に入れる前にも一仕事あります。この辺については、次回のブログでご紹介したいと思ってます。
※六角宝幢は木製の仏教関係の塔で、平安時代の出土例としては非常に珍しい。赤外線で撮影した画像をデジタル処理すると、全面に仏画が描かれていることがわかった。法会の際の荘厳具説、供養塔説などがある。