屋代遺跡群出土木製品の取り上げ開始(木器保存処理室より4)
現在、ポリエチレングリコール含浸(木器処理室より2参照)による保存処理を進めています。先頃、E槽が開始から2年を経過し、千曲市屋代遺跡群出土品など1,287点の取り上げが可能になりました。そこで、1月8日(水曜日)から、ボランティアの方を含めた5人前後で、一日平均200点、週2日ほどのペースで、取り上げを行っています。
「どうして一気にとりあげないの?」とお思いでしょうが、それにはわけがあります。
60℃前後に保たれた含浸槽内で液体だったポリエチレングリコールは、室温にさらされると急速に固まります。木製品内部は、これによって補強されますが、問題は木製品の表面です。「熱っちっち・・・」などと言いながら取り上げた木製品には、ドロドロのポリエチレングリコールがべったりと付き、黒ビカリしています。これを素早く拭き取らないと、真っ白く固まってしまうのです。少しでも時間が経過してしまうと、例えば、白砂糖をまだらにコーティングしたおせんべいのようになってしまいます。こうなると、木製品を傷つけずに白い塊を外すには困難が伴います。そのため、“一人一点必殺”の手順で、素早く作業を進める方法をとっています。
とは言え、そこは脆弱な出土木製品なので、早さだけを追求するわけには行きません。細心の注意を払い、木製品が毛羽立ったり、破損しないように慎重に拭き取らなくてはならないのです。熟練の技が発揮される場面です。
と言うことで、いっぺんにたくさん処置するわけにも行かず、神経もすり減るため、1月末頃までかけて、順次、取り上げていく予定です。
今回の木製品は、報告書に掲載し切れなかったモノがほとんどですが、馬形木製品の脚と思われる棒状製品や建具などの部材片等が含まれていました。奈良時代の屋代地域における木工技術を復原するには、貴重な資料となりそうです。ただし、展示までには、まだいくつもの工程が残っているため、お披露目できるのはもう少し先になります。