木器保存処理室より16

出土した農具に目立つアサダ

 長野市の榎田遺跡や川田条里遺跡から出土した弥生時代〜古墳時代の農具、あるいは千曲市屋代遺跡群の古代の鍬などには、アサダと同定された木が複数あります。また、農具以外では、杵や横槌、紡織具の一部などに使われていました。
 カバノキ科アサダ属アサダは、日本列島に広く分布する落葉高木です。図鑑を見ると、比較的平らな肥えた土地に多い・・・、陽樹(日あたりのよい所に生える)とあります。ということは、人の活動によって森林がある程度開かれたような場所、人里近くを好んで育つ樹種と言えそうです。そのため、人との付き合いが長く続いてきたのかも知れません。
 6月後半、どんな木なのか確認するため、塩尻市立平出博物館の講座に合わせて、博物館近くの床尾神社に行ってきました。大木群という名称の通り、想像していた以上に、太い幹が真っ直ぐ伸びていて、周囲のスギと同じような樹形をしていました。樹皮は片状に剥がれるようです。また、葉には微細な毛があり、とても柔らかい肌触りでした。少数でしたが、穂状に下がる花もみられました。
 解説板によると「辺材は黄白色、心材は暗褐色でその材はいずれも堅く粘り強く光沢が美しい上に耐久力があるので利用度が多く・・・」、さまざまな用途に使われてきたようです。
 常設展示室には、榎田遺跡のアサダ製鋤、鍬、杵が展示してあります。秋季企画展「樹木と人の交渉史」(10月3日〜11月29日)の際も、合わせてご覧ください。

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